最終更新日 2024年11月5日 by andiwa
これから税理士として独立をしていこうと考えている人は、税理士事務所と税理士法人、どちらの運営形態で働くことになるでしょう。
税理士事務所と税理士法人は名前が違うだけで同じように思えるかもしれませんが、細かく見ていくといろいろな違いがあります。
まずは両者の違いから確認していきましょう。
税理士事務所と税理士法人の違い
まず税理士事務所というのは、税理士が「個人事業主」として個人経営をしている事務所を指しています。
つまり個人事業主という事は、運営している事業主本人に対して所得税が課税されるという事になります。
税理士として独立している人たちの中で最も多い運営形態が、この税理士事務所です。
いっぽう、「税理士法人」というのは何かというと、「2人以上の税理士が共同で設立する法人形態」の事を指していて、簡単に言うと「会社を立ち上げ組織として動く形態になっています。
したがって税金も会社を設立した税理士本人にかかるのではなく、設立した会社にかかる「法人税」となります。
一般的なビジネスの流れでいえば、個人事業主として事業を立ち上げ、運営が軌道に乗ってくればさらに収益を上げるために会社を設立するという形になりますが、税理士の場合も同様に、まずは整理し事務所を立ち上げて顧客などを獲得して収益を上げていき、ある程度軌道に乗ったら同じ事務所で勤務している税理士仲間とともに法人化させる、といった流れになります。
税理士事務所と税理士法人では取り扱う仕事の内容に違いがあるのかが気になるところかもしれませんが、法人化をしたとしても、主な業務は中小企業の会計整理や税務申告といった仕事で、税理士事務所の時と変わることはありません。
税理士法人のメリット
では、どうして税理士法人が生まれたのかというと、税理士事務所にはないさまざまなメリットがあるからです。
どちらの営業形態が良いか悩んでいる人は、税理士法人のメリット、そしてデメリットをしっかり把握したうえで税理士事務所と比較すると良いでしょう。
まず法人化する最大のメリットは、「支店を設置できる」という点です。
税理士事務所はあくまでも個人事業ですから、店舗の数を増やそうと思っても増やすことが出来ませんが、法人化して会社という扱いになれば支店の数を自由に増やせます。
ただし1店舗に必ず1人は税理士資格を有する人が在籍していなければいけません。
次に法人化することで節税ができる、というメリットがあります。
収入が増えれば増えるほど税率が高くなっていくというのは税理士をしている人なら当たり前に知っていることですが、1,800万円を超える収益があった場合、所得税と住民税を合わせると収益の半分を税金として支払わなければいけなくなります。
いっぽう法人化すればどれだけ収入があっても税率は一定です。
法人税、事業税、住民税を合わせても36パーセント程度で済みます。
そして経費の範囲を広くできるというのも節税対策を考える上では大きなメリットです。
例えば税理士の給料を法人化すれば役員報酬という形で経費に計上できますし、家族への給与や保険、社宅の賃料などさまざまなものを経費として計上することが可能です。
決算月も法人化すれば特に定められていません。
個人事業主の場合は毎年3月に確定申告をしなければいけないという定めがありますが、法人化することによって例えば固定資産の売却などによって一気に大きな利益を得ることになった場合には、その時点でいったん決算にして納税額を抑えるといったことも可能です。
また法人化すれば退職する人に対して退職金を支払うことが可能になります。
退職金は所得税を計算する際に優遇されるので、事業所得と比較した場合にかなりの節税効果が期待できます。
そして退職金を支払う事は法律で義務付けられているわけではないので、経営が芳しくない場合は支払わないという選択肢も可能です。
以上のように法人化することによって事業を拡大させやすくしたり、税金を支払う際に様々なことで節税ができるといった点がメリットだと言えるでしょう。
このような数字で見えるメリットのほかにもブランド力の向上という目に目内一途もあります。
税理士法人のデメリット
ではいっぽうデメリットにはどういったものがあるのでしょうか。
まず法人化するにあたっては一定の条件があります。
税理士が法人を設立するためには、社員が2人いることに加えて、社員は税理士に限られていること、さらに登録している税理士に、税理士法上の欠落理由に該当している人が居ない事といった条件をクリアしなければいけません。
そして手続きの際にも登記手続きが必要だったり、個人事業主と比較して提出しなければいけない書類が増え、変更や解散の際にもたくさんの書類の提出が必要になることから、個人事業のように気軽に変更や解散ができないというようなデメリットがあります。
つまり法人化することによって、何らかの手続きをする際に負担が大きくなるという事です。
したがって法人化するにあたっては共同で会社を設立する税理士とよく話し合い、方針をしっかりと定める必要があります。